ハートインタッチアワード

【エントリーNo.100】ふじたか しんこ「コハルのいのち」《受け手部門賞》

ハートインタッチアワード 心のレスキュー大賞

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ノミネート作品

「こころのレスキュー大賞」は、心に寄り添った/寄り添ってもらったことで人生が変わった体験談を通して、真に心に寄り添うサポートとはどんなものかを多くの方に広く知ってもらうことを目的に設立した賞で、毎年10月に作品募集を開始、12月のHITキャラクトロジー心理学協会のイベント〈Heart in Touchアワード〉にて受賞作品が発表されます。
Heart in Touch Award 2023

ハートインタッチアワード2023
こころのレスキュー大賞
《受け手部門賞》

 

【エントリーNo.100】

ふじたか しんこ
作品タイトル : コハルのいのち

“コハルが居なくなったら わたし生きていけるかな”コハルがあまりに愛しくて それが逆に怖くなって思ったこと。

コハル(心晴)とはわたしが人生で初めて飼った犬、おおきな秋田犬のメスだ。

2021年9月コハルが8歳と2か月のとき 顔に突然 大きなイボができた。「これってなんだろう」軽い気持ちで夫と病院に連れていくとすぐに先生から原因不明なことと、手術の話がでた。突然のことにとても動揺し、すぐにヒーリングを申し込み揺れる心に寄り添いサポートしてもらった。「きっと大丈夫」そう言い聞かせて 手術の日を迎えた。

手術のあいだ、コハルのヒーリングを動物専門のヒーラーさんにそして私もヒーリングをお願いした。動揺する心と同居しながら、今感じていることを、指おり話していき、どうにか自分を保ち過ごせた。無事手術が終わり、帰ってきたコハルを抱きしめた。 きゃーん きゃーーーーんと痛がるコハルのそばに寄り添い、なでなでした。実はコハルが鳴いたのは、このときが初めてだった。産まれて2か月で うちにきたけれど、ホームシックもなく落ち着いた子だった。よほど手術あとが痛むのだろう…。何もできないし、痛そうなコハルを見るのが辛くてたまらなかった。「飼い主さんが隣にいてあげるだけで、コハルは痛くてもうれしいよ」と友人に言われて コハルの気持ちを想い、コハルに寄り添った。ふと目にした文に、【いのちあるものは いつかはおわりがくる】と書いてあり、その通りだとわかってはいても、妙にその言葉に反発したくなる気持ちになった。

1週間後、病理検査の結果がでて、コハルは悪性リンパ種だと言われた。がっくりした。でも結果をまつ間モヤモヤしていたので、少しだけすっきりもした。状態が悪化するまでは経過観察で良いとのことで、また前のように過ごしていた。

が、3週間たったある日、突然、本当に突然にコハルは急に顔がぷっくり腫れあがり、歩きたがらなくなり、食欲がなくなり、呼吸がしずらくなった。これはまずい・・・と思いすぐに動物病院へ。その状態はおそらく悪性リンパ種の症状だろうと判断され、血液検査をもう一度するけど、待っていたら危ないと先生に言われ、藁をもすがる思いで、治療がはじまった。そこからは、V字回復。

不安はあったけれど コハルは 食欲も戻り、呼吸もとおり、歩けだした。ちょうどその年の春に父が旅立ったのだが、そのときに膵臓癌の治療をして、どんどん弱っていく父の姿を、隣でみていたので、そのときと同じなんじゃないかというイメージもあり、先生にもヒーラーさんにも、怖い、怖いです・・・と言っていた。しかし、個人差なのかもしれないが、コハルは目に見える副作用が少なく、ずいぶん楽そうだった。食欲も戻り散歩もでき、陰っていた道に、ほんのり光がさした気がして ほっとした。

そこからは、週に一回の通院、血液検査をしながら、治療を続けた。不安はあったけれど、治療生活は安定していた。すると、私のこころもからだも、一時期の緊張感が和らいでいた。ヒーリングは定期的にうけて、荒波から始まったとしても 最期はほっと凪になるような ありがたい時間だった。そして、父が悪くなるころから、ふとした仏縁で参加するようになった、オンラインの坐禅会に参加して、毎晩少しの時間だが閑かな時間を持った。ヒーリングが海なら、坐禅は 森や大地のような感じ。父の闘病、父の旅立ち、そこからの愛犬コハルの病気と、激しい動揺のなかで、自分のもちものは、シンプルになっていった気がする。そして治療から9か月後、コハルは ぶじ完解した。まさかの完解。

しかし安心したのも束の間、4カ月がたったある日、また、コハルが突然、自分の足でほとんど歩けなくなり、食欲がなくなり、呼吸がしずらくなった。すぐに病院で検査。再発のリスクの話は先生から聞いていたものの、完解したあと調子がよかったので、突然のことに、かなり動揺し、すぐにヒーリングをお願いした。「前もあったし大丈夫」と平気なふりをして抱え込まず、サポートを求め とても救われた。検査結果は、やはり、悪性リンパ種の再発。すぐにまた治療が始まった。ただ、今回は様子がちがった。V字回復しなかった。コハルは絶好調に戻らなかった。

このときくらいから、以前の治療のときとは違った様子に、私のなかで、なにかが剥がれていった。絶望、くやしさ、恐怖、信じる気持ち、有限である“いのち” に対してどうしようもない辛さ。ヒーラーさん、友達、コハルを愛してくれるひと、一緒の船に乗ってくれている夫、支えてくれる母、みんな、ありがたかった。どうにかしてあげたいけど、コハルのいのちは、コハルのいのちなのだと感じた。

ある通院の日、その日は白血球が低すぎて治療ができず、そのまま何もせず帰宅した。そこから数時間し、どんどん呼吸が苦しそうになった。コハルは、明らかにその晩、いままでにないくらい弱っていった。夜中になるにつれて、どんどん衰弱していくコハル、病院に連れていこうか、いや これは、そういう次元ではない・・・と感じ、夫も同じ気持ちだったようで、夫婦で交代してコハルに寄り添いお世話をし、鳴いているコハルをなでた。コハルの痛みが和らぐようにと、ヒーリングもしてもらった。落ちつかない激流の中だが、こころが妙にどっしりとしていた不思議な永い夜だった。

徹夜で看病し、朝を迎え、コハルはいつもゴロゴロしていた玄関で、夫と私のそばで旅立った。

泣いた。泣きながら、だんだん固く冷たくなっていくコハルをなでた。愛してる。ありがとう。と、コハルに伝えた。母や友人、そしてヒーラーさんにも報告をして、感謝を伝えた。コハルは地元のお寺さんに来てもらい、自宅で葬儀をした。二人三脚でがんばってきた、動物病院では、報告のご挨拶にいったとき、崩れ落ちてしまった。

父もコハルもまだ生きているとき、ヒーラーさんに言った。「わたし、“死”が怖いです」「“死”のなにが怖い?」と聞かれ 死が怖いの中の、なにが怖いのかなと考えた。「じゃあ“死”がなかったらどうする?」と言われ、ぎょっとした。「え、それは嫌」と応えた。

永遠を求めている訳ではなかった、いのちを生き抜きたいと思った。愛する存在と、こころとからだが柔らかく触れ合うこと。感じているこころ、生きているからだ、これが私にとって大切な宝物だ。

父が亡くなるまで、私は「生」と「死」しか知らなかった。父の旅立ちを自宅で母と共に見護ったとき、いわゆる初めての看取りで、その瞬間に立ち会い 「人が死ぬ」ということはどういうことなのか、を目撃した。父のことが大好きだった私は、癌で腹水で大きく膨れ上がった父のお腹に、子供みたいに顔をうずめた。泣きながら、このお腹の温もり、おとうさんからの最期の贈り物だな、と感じた。その大きなあったかいお腹の温度が変化していくことが、とても不思議だった。そうか・・・こういうことなのか・・・悲しさの中にも、神秘を感じた。父への尊厳というより、“いのち”に対する尊厳のようなものを感じていたのだと思う。コハルのときも、おなじだった。コハルがだんだん冷たくなっていくときに、最期に、つーーーっと ほんの少しおしっこが出た。息を引き取ったあとに、漏れ出たそのおしっこが、愛しくて、なんともいえない気持ちになって、泣きながらコハーって思った。元気なコハも、しんどそうだったコハも、おしっこも、ぜんぶぜんぶ まるごと コハルのいのちだ。

コハルが旅立ってしばらくたったとき、あるヒーラーさんに言われた。「私も大切なペットを亡くして、とても悲しかった・・・こんなに悲しいことがあるのかと思った・・・。もしできるなら、また次の子を飼うといいよ」といってお守りを渡してくれ、しばらく身に着けていた。それからは ときどき嗚咽のように泣き、あふれ出してくる感情を感じた。コハーーーーなんで死んだのーーーーーーもーーーーーーー。とにかく痛かった。愛しい、悲しい。コハに逢いたいよ。コハに触りたいよ。散歩してもコハルにストライキされないのが、寂しくて、味気ないよって、空に向かって話しかけた。競歩みたいに、さくさく コハルと散歩した道や海を ひとりで泣きながら歩いた。お世話になったヒーラーさんも「犬がしんどかったら、猫とかどう?」なんて言ってくれていた。いや。。。もうこんなに辛いのはいや。。。 もう 生き物は飼わない!そう思った。

泣いて、泣いて、工藤静香さんの【慟哭】じゃないけれど、4カ月中 泣いて、泣いて、泣いて、『にゃーーーーーーーーーーーーー』ひょんなことがから、うちに元地域猫のコトラがやってきた。仲良しのお店のオーナーさん夫婦がご縁をつないでくれた。自分でも予想外の出逢いに、固く閉ざしたつもりの門戸が、ひらいた。4.7キロの雄の猫。コハルの27キロとは違って 小さいからだ だけど、体温と柔らかさのある、この感じ あーーーーーーーー。またこころが解けていった。

生きていたら、からだも、こころも、揺らぐ。大きな揺らぎ、小さな揺らぎ、その中で、きっと変化してるんだろうな。猫のコトラは、急に寒くなったからか、昨日お腹の調子が悪くなったが、病院で助けてもらい、お薬で調子がよくなった。私も秋に痛めた腰が、今回のはしぶとく、治りずらい。でも、辛いときは、ひとりで抱え込まず、またその時々のご縁とタイミングでサポートを求めたらいい、強がらず、弱さを知ればいい、この自分でいいのだ、と思える緩さができたのは、人生のギフトだ。ちなみに私のお腹周りも緩さがでてきて、パンツのサイズが変容している。スキニージーンズから、ぬくぬく緩ゴムパンツへ。

コハルが居なくなったら、わたし生きていけないと思っていたけれど、いま、生きている。

このエピソードの中で、あなたは何によって癒されたと思いますか? : そのときどきのご縁やサポート、HITメディカルヒーリングの時間、坐禅の時間、家族の結束、まわりのひとの温かいサポート

 

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