クライアントさんの成長とご自身の成長を綴ったレポート
最初、夢解きモニターをきっかけに、SASセッションを受けてくださったAさん。資格試験に取り組もうとしても、身が入らない。周りを見れば、きっと自分はこう思われているに違いないと気が逸れてしまう。やりたいことに取り組めないのはなぜ?お話を伺いながら、SASでトラウマの奥に降りて行きました。するとそこには、「自分がやりたいことをすると、母親に愛されない」「母親の気持ちを気にして動けない、怒りをためるマゾキスト」が表れていました。
初回SASで気持ちが整理され、直後の試験勉強は集中して無事合格と報告がありました。
2回目のSASを申し込まれたのはそれからしばらく経ってのことでした。
「職場を辞めたい。転職したい」と言うご相談でしたが、「辞めたいと思う心の裏にあるものを解くことが先かも。そうでなければ、別の職場でもまた同じものを引き寄せるのでは?」と、SASを勧めました。その根元には、やはり母親との関係で作られた痛みがありました。上司が年配の女性ということもあり、母親を転移する傾向が浮かびました。
でも、このセッションを終えた後のAさんの反応は、それ以前と違い、何か納得行ってない様に感じられました。夢解きであれSASであれ、何度もご相談を寄せてくださったAさんなのに、行き違いが生じたのは自分の未熟さが出たのだと思い、その日のセッションを振り返るほど、私はどんどん意気消沈しました。
その翌々日私自身が受けたヒーリングの中で、「Aさんが上司にお母さんを転移するように、私にもお母さんを転移して、抵抗を持たれてしまった」「私はそんなつもりはないのに」と、考えている自分が浮かびました。
「自分の未熟さを知った、ダメダメだ」と嘆き訴えましたが、その時ヒーラーは、ロウアーにひたる私に飴ちゃんをくれて、ロウアーごもっとも!と持ち上げるでもなく、淡々と「転移が起きていた事実」に寄り添うので、私もロウアーに居続けることもできず「では、ここで自分はどうあるか」を探して口にするしかありませんでした。ちょっと「イイコちゃん」をしたような。
ヒーリングのハイヤーな気分から現実に帰ったとき、またもやロウアーな自分が顔を出し、自分のロウアーな気持ちを「そうかそうか、とヒーラーに受け取ってほしかったのに、かまってもらえなかった」とくすぶっていることを感じました。これは私自身のマゾキストな要素の声です。
その日は、自分のマゾキスト要素とクライアントのAさんのマゾキスト要素が重なっているとは、まるで思い至りませんでした。ただ、自分が受けたヒーリングを振り返って、「ヒーラーは私がロウアーな反応から抜け出て、自ら統合へ歩き出すことを信じている存在」と感じました。私もセラピストとして、同じヒーラーシップの場に立とう。
今にして思えば、あの時自分を通して「マゾキストのエネルギー」を癒したことが、のちの展開につながっていたのだ、と思います
さらに二か月ほど経ってAさんからご連絡がありました。Aさんによれば、私が言った、出来事の裏にあるものを解いてからという提案が「まるで教科書的に言われたと感じた」とのことでした。やはり何かの抵抗が起きていたのですね。
そうは感じつつも、Aさんはメルマガ配信記事を読み続けて下さり、記事への共感と共に先のセッションが腑に落ちたと連絡を下さったのでした。そこでまたセッションの申し込みがあり、以降月に一度のペースでセッションのお申し込みが続いています。
セッションを申し込まれるきっかけとなる出来事・反応はそれぞれ別のことですが、降りていく先は子どもの時の情景。「感情を感じる」「外側ではなく、内側」とセッションの都度誘導しますが、長く繰り返された癖はなかなか変わりません。周りに起きていることを観察し、あれがこれがと注目・ジャッジしながら、自分をその場から切り離そうとするマゾキストの傾向が表れます。その防衛のありようは、私こそが長年繰り返したものなので、よく知っています。
あるときの相談は、また浮上してきた「会社を辞めたい」でした。その気持ちの裏にあるのは「自分が軽んじられる」と言う声でした。でもそれは内側を投影して外側に作られた現実。つまりは「Aさんご自身が、自分の実力や感性を認めていない」ことに起因していました。本当は、Aさんはご自分には力があるということを知っているのに、「誰も、認めてくれない」「だから表さない」「この場所は自分のものじゃない」と、自分を分離しようとしていることが見えました。
「私を活かす(生かす)のは私」、とアファメーションを整えたとき、Aさんご自身の中で、この仕事この職場が、本当にやりたいこと・働きたい場所だと、深くつながって、ご自身の豊かな感性を開いて働く場へと変わっていきました。
Aさんは最初、意識が外側に向かう傾向が強かったので、とにかく自分の内側を感じることをサポートさせていただきました。それは、私自身がそうすることで「身の周りに起きた問題」に振り回されず、自分を取り戻すことができた、と思っていたからです。しかし「自分を見つめる・自分を感じる」を突き詰める時に、私は問題の全てを、自分の責任にすることで解こうとしていることが気になり始めていました。
ある時Aさんの相談は、ある失敗についてでした。Aさんも、ご自身を責める声を持ち、周囲から責められると思い、いたたまれない状態でした。その時「セッションを受けて起きている事の本質を解こう」とお申し込みを下さったことに、私も応えたいと思いました。
その相談を頂く少し前、私自身は自分の母親に持っていた誤認に気付き、「自分をつつむ世界への信頼」を思い出すプロセスを過ごしていました。
私のマゾキスト要素と重なるところで、サポートさせていただいてきたAさんの中にも、この時同じ流れを感じ、失敗があっても大丈夫とお伝えしました。
それまでの「内側を見る、自分を信頼する」ことの裏側に出て、「外側を信頼する」タイミングに来たように感じました。
セッションの翌日、Aさんはご自身の失敗と思ったものを、謝ったそうです。すると、その失敗が失敗でもなく、むしろ良ききっかけだったこと、もちろん周囲の誰もAさんのせいとも思っていなかった事実と、ご自身がすでに「大丈夫な世界」にいたことを体験されました。そのご報告は、私にとってもとても嬉しくありがたいものでした。
私のセッションに、時に抵抗を感じられたことも明かされたAさんでしたが、それをも明かしながら信頼を寄せてくださり、一緒にセッションを重ねてきました。
自身のエッセンスを活かしながらあるとき、周囲との関わりも変わり、安心と大丈夫が広がる。その理を思い描く私でしたが、Aさんがご自身の体験を通して証として下さったこと、セラピストとして立ち会わせていただき感謝しております。
自分が変わる 周りが変わる 世界が変わる 大賞ノミネート 高橋 眞理子