ハートインタッチアワード

【エントリーNo.054】中也「「もういいよ」がくれたもの」

ハートインタッチアワード 心のレスキュー大賞

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「こころのレスキュー大賞」は、心に寄り添った/寄り添ってもらったことで人生が変わった体験談を通して、真に心に寄り添うサポートとはどんなものかを多くの方に広く知ってもらうことを目的に設立した賞で、毎年10月に作品募集を開始、12月のHITキャラクトロジー心理学協会のイベント〈Heart in Touchアワード〉にて受賞作品が発表されます。
Heart in Touch Award 2023

【エントリーNo.054】

中也
作品タイトル : 「もういいよ」がくれたもの

男だから。社会人だから。夫だから。父親だから。
 令和2年9月18日。鬱病の診断をくだされた時、まさか自分がと耳を疑った。不眠、食欲不振から始まった体調不良は、その頃には幻聴、幻視を伴うまでになっており、通勤もままならなくなっていた。体は悲鳴を上げていたのに、頭が「鬱病」という響きをいたく嫌った。

 男のくせに、心が弱すぎる。
 社会人のくせに、だらしない。
 夫のくせに、妻に申し訳ない。
 父親のくせに、娘に何と説明するつもりか。

 「〇〇のくせに」のステレオタイプは、「鬱病になることは、人間として失格」の烙印を自身の手で焦げた身に焼きつけていた。そして「私」がどこにもいない風景が、ただただ広がるばかりであった。
 妻にそのことを泣きながら詫びた。男としても社会人としても夫としても父親としても失格でごめんね、と。
 その時の妻の言葉が、今も耳に残っている。
「もういいんだよ。あなたに戻ろう」と。
〇〇であることに苦しんでいたことを、妻は知っていた。「もういいかい?」と尋ねなくても。
 彼女はこうも言った。自分や娘のために、家族のために、お金のために、あなたはずっと演じてくれていたんだよね。ありがとう。
でもね、もういいんだよ。あなたに戻って、と。
 彼女が言う「あなた」が何であるのか、その時は分からなかった。いろんな仮面をつけ、その一つずつに、「こうであるべき」色を塗り、必要に応じて付け替えて生きてきたことに気が付くまで。それは、「これからどう生きたいのか」という自身への問いに姿を変えた。それからの私は、事あるごとに「本当はどうしたい?」と問うようになった。常に答えが出る訳ではない。ただ、答えが出た時はそれに従うようにした。
 するとどうだろう。自分以外のすべての外的要因から、少しずつ解放され、心が軽くなっていくのを実感出来たのである。自分が変わると、不思議なもので周囲の反応もオセロを返すように変わっていった。その変容は常にプラス方向のものばかりではない。だが、「こうしたい」という意思に基づいて選択し、得られた結果というのは、当然すべて自分の責任であるから、他人を思考に巻き込むことがない分、楽であることに気が付いた。
 妻の「もういいよ」から変わり始めた人生は、「誰かのせいにしない」生き方となって、私を他の誰でもない、「自分」へと導いてくれた。
 「自分らしく」は、時として苦痛を伴うかもしれないけれど、単に「自分であること」は、心をいろんな重力から解放してくれるよ、きっと。
 これも、妻が私に言ってくれたことである。

このエピソードの中で、あなたは何によって癒されたと思いますか? : 「もういいよ」の一言

 

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